アメリカン・アールデコ・コレクション

2013.02.15

レイモンド・ローウィ/地球儀型ラジオ

地球儀型ラジオ(グローブラジオ)/1935年
デザイン:レイモンド・ローウィ

ペンシルバニア鉄道「GG1」/1930年代後期
デザイン:レイモンド・ローウィ

「レイモンド・ローウィ 20世紀のデザインの旗手」
広報ツール:著書「口紅から機関車まで」や、ピースのパッケージデザインでも知られるレイモンド・ローウィ。日本のデザイン界にも大きな影響を与えた20世紀を代表するデザイナーの業績を紹介する展覧会。(たばこと塩の博物館)

ローウィの名前を知らない人でも、ラッキーストライクのパッケージを思い出せない人はいないだろう。1942年に、白地に赤い標的のパッケージをヒットさせたローウィは、生活用品から工業製品まで幅広い活躍を見せたデザイナーである。彼はその成功で「デザイナー」という仕事を広く社会に知らしめたが、半面「売れるデザイン」の生み手であったがために商業主義的との評価も招いた。だが現在、半世紀の年月が彼のデザインの真価を証明しつつある。斬新な形状や優れたビジネスセンスに隠れがちだが、そのデザインの底辺には常に「美しく、シンプルなものは多くの人に、長く支持される」という彼の信念があった。第一次大戦後にフランスから渡米したローウィは、アメリカ製品の無骨さに衝撃を受け、この国の技術力や経済力とその美意識との落差に驚いたという。自分のなすべき仕事を見い出したローウィは、コピー機や冷蔵庫など工業デザインの分野で頭角を現わし、1934年に発売されたこのラジオでは当時の新素材であるベークライトと、地球儀をモチーフにした印象的なデザインで雑誌にも取り上げられた。機関車S1やグレイハウンドバスなど、その後の活躍はめざましく、彼の名前は広く内外に知られることとなる。

 またあまり知られていないが、日本にもローウィのデザインは多く残る。たばこ「ピース」のパッケージやシェル石油のロゴマークなど、そのデザインはいずれも企業イメージを決定づけるほど力強い。このレイモンド・ローウィの業績を再評価する展覧会が現在たばこと塩の博物館(東京都渋谷区)で開かれている。地球儀型ラジオをはじめ、国際デザインセンターのアメリカン・アール・デコ・コレクション約30点も出品され、当時の社会背景とともに幅広い活動の意義が検証される。「アメリカをデザインした男」とも呼ばれたデザイナーの仕事に触れる好機であろう。

(国際デザインセンター機関誌「NOC」 Vol.75 / May-June 2004より転載)