Design Talk

 
10月26日に中区役所で開催されたデザイントークは、第1部は内田氏の講演、第2部は竹村真一氏、粟野弓氏を加えた3名によるトークセッションという2部構成で行われた。


内田氏は、20世紀の工業化社会の矛盾が世界中で表面化しはじめた1968年のパリ5月革命や、ミラノトリエンナ-レ展といった歴史的ムーブメントに言及し、その時代に浮かび上がってきた問題の解決、すなわち個人の自由と固有文化の尊重、歴史の再認識、地球規模での視点といったことが、21世紀にも引き続き残されている課題ではないかと問いかけた。また、茶の湯文化、茶室のデザインを例に、人間の精神と物質が分離されていない日本文化の本質にもふれた。20世紀の消費主義デザインヘの批判とともに、自身が描く21世紀のエスキースのキーワードとして、「変化するもの」「透明性を持ったもの」「浮遊するもの」「柔らかなもの」を示し、より精神性を深めたデザインへの関心を近作の作品紹介を交えて語った。

第2部のトークセッションでは、まず文化人類学を専門とする竹村真一氏が、世界中の地震データを可視化したプロジェクト「センソリウム」や、東北芸術工科大学における内田氏とのコラボレーションを紹介し、インタ-ネット時代ならではの世界認識のあり方や、新しいメディアによって発見しうる物質と精神の問題を語った。色彩 学を専門とし、アーティストとしても活躍する粟野弓氏は、微細な感覚や知覚の多様さを探るユニークなインスタレ-ションの数々を紹介した。

内田氏は、二人の活動には20世紀に見失われた微細な感覚や身体の持つ叡智の復権を目指す共通 意識が感じられること、またデザインが大きな役割と可能性を持っていることを指摘し、セッションを締めくくった。今回の展覧会とデザイントークで提示されたエスキ-スの数々が、今後どのような展開をみせるのか、大いに注目したい。

 
▲内田繁氏



▲竹村真一氏(左)、粟野弓氏(右)



■講師プロフィール

内田繁(Shigeru Uchida) =インテリアデザイナー/札幌大学客員教授
1943年横浜市生まれ。桑沢デザイン研究所卒業。1981年(株)スタジオ80設立。商・住空間のデザインにとどまらず家具、工業デザインから地域開発にいたる幅広い活動を国内外で展開。毎日デザイン賞、日本文化デザイン会議会員賞、芸術選奨文部大臣賞など受賞多数。代表作/YOHJI YAMAMOTOブティック、京都ホテル・ロビー、神戸ファッション美術館など多数。著書/「椅子の時代」「日本のインテリア全4巻」「インテリアと日本人」など

竹村真一(Shinichi Takemura) =東北芸術工科大学助教授/(株)プロジェクトタオス代表
1959年大阪生まれ。東京大学文学部哲学科卒業。同大学院文化人類学博士課程修了。通 産省系のシンクタンクでアジア研究や社会開発プロジェクトに携わった後、生命科学や環境問題、あるいは人間とメディアの関わりについて研究・提言を続ける。96年にプロデュースしたインターネット作品「センソリウム」は電子アートの国際的登竜門アルスエレクトロニカでグランプリを受賞。世界中の地震活動をライブ的に可視化した「呼吸する地球」など、インターネット時代ならではの実験的試みが多方面 から注目を集めている。主な著書に「呼吸するネットワーク」(岩波)「外在化する脳」(編著:悠思社)

粟野弓(Yumi Awano)= 東京造形大学特任教授/色彩学、アーティスト
1964年名古屋生まれ。金沢美術工芸大学工業デザイン専攻卒業後、インテリアデザイナーとして在名企業に勤務。東京芸術大学大学院芸術学専造形理論色彩 研究室修了。国内外で論文、インスタレーションを発表。1999年第2回岡本太郎記念現代芸術大賞準大賞受賞。現職の他東京芸術大学、日本女子大学非常勤講師。2005年国際博覧会を題材にした〈Edge~森とアートをめぐる対話~〉参加

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