ニュース&レポート

2013.10.01
 
 
名古屋・トリノデザイン交流事業2007

デザイン都市フォーラム in NAGOYA 開催レポート

デザイン都市フォーラム in NAGOYA

パネルディスカッション

「トリノデザイン 2007-2008」展会場

2005年に名古屋市がトリノ市と姉妹都市となって以来、毎年実施しているトリノデザイン交流事業は3回目を迎え、2007年10月21日に国際デザインセンター・デザインホールで「デザイン都市フォーラムin NAGOYA」を開催した。
 このフォーラムはトリノとのデザイン交流に加え、ユネスコの「クリエイティブ・シティズ・ネットワーク」(※)のデザイン分野で認定を受けているモントリオール市の参加を得て、3都市でこれからの「創造的なデザイン都市」のあり方について語り合うという趣旨のものである。それぞれ独自のデザイン振興を行っている3都市は、活動の実績や将来のビジョンをプレゼンテーションし、国際的な都市間のネットワークの重要性を語り合った。
 1989年にデザイン都市宣言を行ってから18年、新たな指針をかかげる名古屋にとって、海外都市の取り組みは大いに刺激となり、今後のさらなる交流や連携の可能性を感じさせた3時間であった。

第1部/3都市のプレゼンテーション
トリノ市:トリノ2008 ワールドデザインキャピタル
国際デザイン連盟(IDA)の主要プロジェクト「ワールドデザインキャピタル」の初の認定都市に選ばれたトリノは、2008年の1年を通じてさまざまなデザインイベントを展開。その中心テーマは「フレキシビリティ」で、変化の激しい現代都市のニーズを満たすフレキシブルな思想と方法、そしてデザインを模索する。年間を4期に分け、合計100近いイベントを実施し、100万人の来場者数を見込んでいる。
(ピエール・パオロ・ペルッチョ・トリノ工科大学准教授)

モントリオール市:ユネスコ・デザイン都市
モントリオールでは、都市のアイデンティティの核として、市政全般にわたりクオリティの高いデザインの導入が図られている。1991年以来デザインコミッショナーとして精力的に活躍するラクロワ氏は、デザイン関連の有能な人材が集まるモントリオールの活動の歴史と今後の展望について紹介し、国際的なネットワークと共同プロジェクトの発展性への期待を語った。
(マリー=ジョゼ・ラクロワ・モントリオール市都市デザイン担当局長 )

名古屋市:デザイン都市・名古屋
1989年のデザイン都市宣言以来、18年にわたる市のデザイン振興の取り組みを紹介し、これから新たなステージを迎える「デザイン都市・名古屋」の指針として、「人材の育成」、「環境配慮型ものづくり サステナブルデザインの取り組み」、「多様な文化とのネットワークづくり 世界のデザインコミュニティとの連携」の3つの目標をかかげた。
(安井 孝治・名古屋市市民経済局産業部長)

第2部/パネルディスカッション「創造的なデザイン都市をめざして」
はじめに、2011年完成予定の「トリノデザインセンター」について、ペルッチョ氏から補足プレゼンテーションがあった。かつてのフィアットの工場跡地に、さまざまなデザイン活動、特にデザインと経済と教育を結びつけた有機的な活動のできるセンターを建設する計画は大変興味深い。モントリオールのラクロワ氏からは市民に向けた「オープン・ハウス」というデザインプロモーションの紹介があり、クリエイティブ・シティの活動には何より市民の理解が大切だと語った。若いデザイナーやクリエーターを起用したプロモーションビデオも、その若い活気を感じさせてくれた。名古屋市の安井氏は、市が行う公共的な啓発事業と民間事業を、いかに連携させて活性化させていくか、また中小企業のデザイン力の強化を市がどのようにサポートしていくべきかが今後の課題と語った。
 そのほか、「デザイン教育」「若いデザイナーの育成」、世界に共通する課題である「サステナブルデザイン」などについて各都市のビジョンが語られた。ディスカッションの中で、ラクロワ氏が”フレンドシップ”という言葉で表現したように、最後に今後の都市間交流の重要性を確認してフォーラムを終えた。

■パネルディスカッション「創造的なデザイン都市をめざして」
パネリスト: ピエール・パオロ・ペルッチョ/マリージョゼ・ラクロワ/安井 孝治
コーディネーター: 内田 邦博 株式会社国際デザインセンター専務取締役

※ユネスコ・クリエイティブ・シティズ・ネットワーク
UNESCO(国際連合教育科学文化機関)が「文化的/創造的な産業」に秀でた都市を、7分野(文学・映画・音楽・民族芸術・デザイン・メディアアート・食文化)のテーマごとに「クリエイティブ・シティ」として認定し、国際的な都市間ネットワークを形成する制度。

(国際デザインセンター機関誌「NOC」 Vol.97[発行:2007年12月20日]より転載)