アメリカン・アールデコ・コレクション

2013.02.15

ラインストーンブレスレット

ラインストーンのブレスレット/1930年代
コレクションギャラリー(コレクションタワー)で展示中

豪華なアール・デコ・スタイルのジュエリーを身につけた女優、キャロル・ロンバード/1930年代

久方ぶりにロマンティックなファッションが復活した今シーズン、春の到来とともにウィンドウにはフリルやレースといった女性らしいディテイルの洋服があふれています。シンプルなスタイルが長く続いた中で、自然回帰思想を反映したフォークロアや華やかさと懐かしさを持つヴィクトリアン様式が注目されたと言われていますが、女性のファッションほど時代の空気を敏感に、また華やかな形で反映するものもないでしょう。人々の思想や生活様式、また景気の動きをも反映して刻々と変化するファッションデザインの世界は、文化史だけでなく社会史を語る上でも重要なファクターと言えるのです。

 この1930年代のブレスレットもアール・デコと呼ばれた当時の空気を如実に示す作品です。デザインは機械時代を反映した直線的なパターンで構成され、ふんだんにあしらわれた石は、ダイヤを模したラインストーン(ライン川の石の意)とよばれるガラスでできています。30年代は不況の中でも購買意欲をそそるモダンな製品が、量産化と機械化を背景に比較的安価に生産された時代でもありました。1929年のブラックマンデーに始まる大恐慌はアメリカ経済に大きな打撃を与えましたが、同時に文化面では一つの起爆剤となったと言われます。当時めざましい発展を遂げた産業の一つに映画産業があげられますが、手軽に夢を与えられる映画は不況にも強い娯楽でした。ディートリッヒやグレタ・ガルボといったミューズの登場は映画界に黄金期をもたらし、ハリウッドは大きな影響力を持ち始めます。銀幕を飾る女優達が まとったドレスや宝石は、専属デザイナーの活躍によって新しいモードとしてヨーロッパからも注目されるまでになり、女性たちは、こうした流行を装身具だけでなく髪型や化粧にも積極的に取り入れました。19世紀末には化粧すら非日常のものであった女性の生活習慣は社会活動への参加とともに大きく変化し、同時に彼女らを取り巻くファッション産業も、この時期を転換期として急速に巨大なマーケットへと成長していきました。

(国際デザインセンター機関誌「NOC」 Vol.63 / May-June 2002より転載)