主な展示作品

コンパクト
1930年代初期

女性を取り巻くファッション産業は1920年代のアメリカにおいて映画産業とともに飛躍的な発展を遂げた。女優が使った化粧品や身にまとったファッションは映画やマスコミを通じて一般女性の流行となり、それまで日常に化粧をする習慣のなかった一般女性も社会進出とともに新しいファッション、コスメに多大な興味と楽しみを見出すようになったのである。

カクテル・シェーカーとトレイ
ノーマン・ベル・ゲデス/1934年

ノーマン・ベル・ゲデスは1930年代を代表する第一世代のデザイナーの一人。乗物などの工業製品からキッチン製品まで幅広い分野のデザインを手掛けた。当時優れた金属製品を数多く手掛けたリヴィアー社から発売されたシェーカーセットは、これ以上ない程シンプルなフォルムに1930年代ならではの階段状のラインが効果的な美しさであしらわれている。


幾何学模様のリビング・ルーム・セット
ポール・フランクル/1929年

ソファの手すりやテーブルの脚など三次元に表現された幾何学模様は、アール・デコのモダンなスタイルを伝える好例である。1920年代後期から30年代にかけての過渡期を示すこのソファ・セットは、ヨーロッパスタイルの複雑な幾何学模様が単純化され、摩天楼のビル群のイメージから生まれたアメリカならではの階段模様などを巧みに取り入れて、より洗練された表現へと変化する様が伺える。


ネックレス
1930年代初期

ファッションはいつの時代も流行をいち早く反映するが、アール・デコのデザインにおいても例外ではない。1920年代には花などの具象モチーフとはかけ離れた三角や四角の形がデコラティブなスタイルとして登場、また合金やプラスチックなどの新素材も取り入れられた。従来装飾品には用いられなかったこれらの素材は新しい質感と色彩をもたらすものだった。

雑誌「プレイゴア」表紙
1930年代初期

1920〜30年代は出版業界にとって大きな発展の時期にあたる。カラー印刷の普及が出版物の品質を飛躍的に押し上げると同時に、カラフルな色彩がもたらした広告効果は出版業界の大きな収入となっていった。当時飛躍的にその種類を増やした雑誌の中でも「プレイゴア」のように舞台や映画などステージ情報を扱った雑誌の表紙は一段と華やかである。


ポスターアンドアートプロセス
リチャード・フロート/1937年

1920年代にはヨーロッパの芸術家が海を渡りアメリカに活動の場を広げていた。彼らの多くはディスプレイや広報物などの仕事を手掛け、新しい芸術運動はさまざまな産業界に大きな影響を与えていった。工業製品や印刷媒体、ファッションなど、当時のアーティストは商業デザインへのを応用を芸術を生活の中で実践する方法として捉えていた。


トースター
1920年代後期

電気の普及は20世紀において最大の生活の変化の1つといえよう。アメリカでは1920年にラジオ局が開設されるなど、1920年代から30年代にかけ電気の普及と技術の進歩が大衆に次々と新しい生活を提供していった。なかでも家電製品の登場は家事の軽減とともに人々に楽しみを与えるものでもあった。冷蔵庫やトースターはプレゼントとしても人気だった。

スカイスクレーパー型ラジオクロック
1930年

今世紀初頭にマンハッタンを中心とする都市部に出現したビル群は新しい時代の到来を強烈に印象づけるものだった。この大型ラジオクロックでは、改正された建築法が道路から一定のセットバックを義務づけたことにより生まれた階段状のビルの形がそのまま製品のフォルムに取り入れられている。見上げるような高層ビルは技術の進歩と発展の象徴でもあった。