ニュース&レポート

2013.10.01
 
 

現代日本における短編アニメーション

平山 志保/swimming

岡本 将徳/上:ばあちゃん・下:パンク直し

岡田 昭憲/上:ひょうたん音頭・下:時の灰

2010日韓デザイン交流展(日本の映像アニメーション部門)には、近年の日本で制作された約30点の自主制作アニメーション作品を選ばせていただきました。個別の作品についての説明は困難ですので、全体像としての話をここにご紹介します。

現代の日本において今回上映した短編アニメーションを作っている作家の中心となるのは、美術系大学に在学中の大学生および大学院生、ならびに卒業後数年の若年層です。そのため、今回の作品群には世代的な特性が要素として強く現れているともいえます。

これらの作品をみたとき、日本の良い部分、つまり治安がよく安全で穏やかな部分と、反面で非常に孤独で閉塞的、神経症的な部分が現れた作品が多く見られるように思います。その要因として私が考えられることはいくつかあります。

まず、20年にわたり経済成長できず高齢化と産業構造の空洞化が進む中、将来のビジョンが示せていない日本に生きる、若年層の希望の持ちにくさとそれに対する開き直りがあります。また、都市化・郊外化により地縁や血縁の繋がりが薄れた中で、インターネットやモバイル環境が発展した高度情報化社会となりました。そのために強いコミュニティはなくなりつつあり、選択可能な緩やかな繋がりが多く存在するようになりました。また、現実空間とヴァーチャルな情報空間での繋がりがレイヤー状となり、他者からは不可視な繋がりが増えています。強制的な繋がりが薄れた結果、自らが交換可能な存在ではないかという疑念を抱えたまま居場所を作ることが必要となったり、あるいはビジネスなどの場所においても過剰にコミュニケーションのための能力が求められるようになった結果として、それを負担に感じたり、コミュニケーション偏重社会への対応に失敗した人達は社会と断絶し、家や個の中に逃げ込んだりもしています。

私は、アニメーション表現とはこうした様々な経済的・社会的な背景の影響を受けつつも、その状況下での人間の心理や願望を表し、時にそれを飛び越えてその深淵を描き出してしまうものだと考えています。
 日韓デザイン交流展に、このように日本のアニメーションを上映する機会をいただけたことを大変うれしく思います。また開催に尽力された関係各位に感謝申しあげます。

(初掲:「2010日韓デザイン交流展」序文/2010年11月/転載にあたり再構成)

■2010日韓デザイン交流展:日本の映像アニメーション部門上映作品
作者/作品/URL(外部リンク)

●東海地域の教育機関関連
イワコシタツヤ/「INPUT OUTPUT」
岡田昭憲/「時の灰」「ひょうたん音頭」/asura
斎藤哲昌/「Nirvana」/Tetsumasa Saito
斉藤美穂/「mermaid」
杉田 崇/「とべないトリ」/AESTROOP

名古屋芸術大学
朝倉尚子/「Pinkmental」
井戸友里/「iDoフレンズ」井上幸次郎/「夢」
坂本まり恵/「cell division」
吉田義宏/「夢のつづき」

岐阜県立国際情報科学芸術アカデミー
井出絢子/「Dedicated to my Hair」
北川正憲/「EMO」
佐藤晋哉/「立方体」
澤村ちひろ/「Good bye Good boy」
世羅恭大/「13」
春成つむぎ/「おしゃれぎつねとあぶちゃん」/春成つむぎ
山田 潤/「UNITY」

●現代日本の短編アニメーション
アライユウジ/「終わりの朝」
岩井澤健治/「福来町、トンネル路地の男」/祝い茶話web
植草 航/「向ヶ丘千里はただ見つめていたのだった」/絆創膏
岡本将徳/「ばあちゃん-GRANDMA-」「パンク直し」/peamar03
くろやなぎてっぺい/「C++」「if time pass」/くろやなぎてっぺいウェブサイト/1980円(イチキュッパ)
古跡哲平/「Engrave」/古跡哲平 TEPPEI KOSEKI
斎藤俊介/「YUME」
上甲トモヨシ/「BUILDINGS」/JO-KO-JO 
椙本晃佑/「The TV show」/Sugimoto Kousuke.net
竹内泰人/「オオカミはブタを食べようと思った。」/無重力とザクロドクロ
平山志保/「swimming」
水江未来/「PLAYGROUND」/WONDER -TRAILER-
山口 翔/「Paper Play」「Trip」
山田園子/「family」

左:釜山デザインセンター/右:映像・アニメーション展

IdcN-DCB交流事業 2010日韓デザイン交流展「気ーDigital Energy」
釜山デザインセンターの開館(2007年)を機に、国際デザインセンター(IdcN)と釜山デザインセンター(DCB)が双方の地元のデザインを紹介してきた交流事業(2007年〜2010年)。2010年度は「釜山デザインウィーク2010」の一環として、ポスターと映像・アニメーションの2部門で、両国合わせて115人の120作品を紹介。
会期:2010年11月10日〜17日
会場:釜山デザインセンター・展示ホールI・II
展示作品数:
ポスター部門;56人56点(IdcN:26人26点/DCB:30人30点)
映像アニメーション部門;59人64点(IdcN:31人35点/DCB:28人29点)
主催:財団法人釜山デザイン団体総連合会、釜山映像アニメーションフォーラム、中部クリエーターズクラブ
日本の映像アニメーション部門企画監修:吉田雅彦
協力:名古屋芸術大学、岐阜県立国際情報科学芸術アカデミー

吉田 雅彦Masahiko Yohida