アメリカン・アールデコ・コレクション

2014.05.02
 
 

コレクションシリーズ vol.14

Geometric 30sーアメリカン・アール・デコと幾何学模様

Geometric 30sーアメリカン・アール・デコと幾何学模様(フライヤー・イメージ)

Geometric 30sーアメリカン・アール・デコと幾何学模様(展示会場)

フランスで誕生し、2つの大戦にはさまれた数十年間に花開いた装飾芸術、デザインの総称である“アール・デコ”。アール・デコ期の象徴ともいえる幾何学模様、あるいはその応用表現は一見してそれとわかる強い個性を持ち、斬新なデザインは当時の人々に強烈な印象を与えるものだった。

直線や丸、三角、四角などのシンプルな要素をダイナミックに組合せ、また具象的な形を幾何学形態に置き換えることでまったく新しい表現を確立したこのスタイルは、キュビズムなどの当時の新しい芸術運動や、19世紀末の産業革命による工業化社会の影響を強く受けていた。その名の由来となった1925年のパリにおける“国際装飾美術・産業美術博覧会”では100以上のパビリオンで最新の建築や工業製品、ファッション等が披露され、機械を連想させる直線的な表現は人々の注目を集めた。19世紀末の優美な曲線を特徴とした“アール・ヌーヴォー”から一転、新しい時代の到来を感じさせるこの華やかなスタイルはその後1930年代にかけて全世界に流行し、さまざまな分野に応用されることとなった。

特にアメリカにおいては、同時期都市部に出現した摩天楼のビル群のイメージや、急速に発達した機械の形状を積極的に取り入れ、より現代的で力強いデザインが数多く生み出された。高層ビルをイメージさせる階段状のデザイン、また大胆にアレンジされた幾何学模様はアメリカ独自のモダン・ライフをイメージさせる家具や家電製品、またファッション小物などに歓迎されたのである。

主な作品

コンパクト スカイスクレーパー・カクテル・シェーカーとトレイ

コンパクト/1930年代中期
女性を取り巻くファッション産業は1920年代のアメリカにおいて映画産業とともに飛躍的な発展を遂げた。女優が使った化粧品や身にまとったファッションは映画やマスコミを通じて一般女性の流行となり、それまで日常に化粧をする習慣のなかった一般女性も社会進出とともに新しいファッション、コスメに多大な興味と楽しみを見出すようになったのである。(写真上左)

スカイスクレーパー・カクテル・シェーカーとトレイ/ノーマン・ベル・ゲデス/1934年
ノーマン・ベル・ゲデスは1930年代を代表する第一世代のデザイナーの一人。乗物などの工業製品からキッチン製品まで幅広い分野のデザインを手掛けた。当時優れた金属製品を数多く手掛けたリヴィアー社から発売されたシェーカーセットは、これ以上ない程シンプルなフォルムに1930年代ならではの階段状のラインが効果的な美しさであしらわれている。(写真上右)

幾何学模様のリビング・ルーム・セット

幾何学模様のリビング・ルーム・セット/ポール・フランクル/1929年
ソファの手すりやテーブルの脚など三次元に表現された幾何学模様は、アール・デコのモダンなスタイルを伝える好例である。1920年代後期から30年代にかけての過渡期を示すこのソファ・セットは、ヨーロッパスタイルの複雑な幾何学模様が単純化され、摩天楼のビル群のイメージから生まれたアメリカならではの階段模様などを巧みに取り入れて、より洗練された表現へと変化する様が伺える。(写真上)

幾何学模様のネックレス 雑誌「プレイゴア」表紙

幾何学模様のネックレス/1930年代初期
ファッションはいつの時代も流行をいち早く反映するが、アール・デコのデザインにおいても例外ではない。1920年代には花などの具象モチーフとはかけ離れた三角や四角の形がデコラティブなスタイルとして登場、また合金やプラスチックなどの新素材も取り入れられた。従来装飾品には用いられなかったこれらの素材は新しい質感と色彩をもたらすものだった。(写真上左)

雑誌「プレイゴア」表紙/1930年代初期
1920~30年代は出版業界にとって大きな発展の時期にあたる。カラー印刷の普及が出版物の品質を飛躍的に押し上げると同時に、カラフルな色彩がもたらした広告効果は出版業界の大きな収入となっていった。当時飛躍的にその種類を増やした雑誌の中でも「プレイゴア」のように舞台や映画などステージ情報を扱った雑誌の表紙は一段と華やかである。(写真上右)

ポスターアンドアートプロセス

ポスターアンドアートプロセス(展示会ポスター)/リチャード・フロート/1937年
1920年代にはヨーロッパの芸術家が海を渡りアメリカに活動の場を広げていた。彼らの多くはディスプレイや広報物などの仕事を手掛け、新しい芸術運動はさまざまな産業界に大きな影響を与えていった。工業製品や印刷媒体、ファッションなど、当時のアーティストは商業デザインへのを応用を芸術を生活の中で実践する方法として捉えていた。(写真上)

トースター スカイスクレーパー型ラジオクロック

トースター/1920年代後期
電気の普及は20世紀において最大の生活の変化の1つといえよう。アメリカでは1920年にラジオ局が開設されるなど、1920年代から30年代にかけ電気の普及と技術の進歩が大衆に次々と新しい生活を提供していった。なかでも家電製品の登場は家事の軽減とともに人々に楽しみを与えるものでもあった。冷蔵庫やトースターはプレゼントとしても人気だった。(写真上左)

スカイスクレーパー型ラジオクロック/1930年
今世紀初頭にマンハッタンを中心とする都市部に出現したビル群は新しい時代の到来を強烈に印象づけるものだった。この大型ラジオクロックでは、改正された建築法が道路から一定のセットバックを義務づけたことにより生まれた階段状のビルの形がそのまま製品のフォルムに取り入れられている。見上げるような高層ビルは技術の進歩と発展の象徴でもあった。(写真上右)

デザインミュージアム・コレクションシリーズ vol.14
Geometric 30sーアメリカン・アール・デコと幾何学模様
個性的なアール・デコ期ならではの、ジオメトリック・パターン(幾何学模様)が応用されたモダンなデザイン製品約70点を展示。
会期:2009年3月27日(金)~5月10日(日)
会場:国際デザインセンター・デザインミュージアム
主催:株式会社国際デザインセンター